
なぜ『ココロコネクト』は“イジメコネクト”になったのか? アニメ史に残る大炎上事件の真相
声優
あれからもう10年以上が経つのか、と思うと少し感慨深い。
2012年。多くのアニメファン、特に声優ファンにとって忘れられない事件が起きた。
その名も「ココロコネクト事件」。通称「イジメコネクト事件」。
この事件は、単なるプロモーションの失敗では片付けられない。
アニメ業界が抱える構造的な闇を白日の下に晒し、その後の業界のあり方を根底から変えてしまった、まさに歴史の転換点だったんだ。
今回は、このアニメ史に残る大炎上事件がなぜ起き、そして俺たちに何を残したのかを、改めて深く掘り下げていこうと思う。
事件の核心:あまりにも悪質だった「偽オーディション」という名の“イジメ”
この事件、何がヤバかったのか?
核心は一点に尽きる。声優・市来光弘氏に対して行われた、組織的な「偽オーディション」だ。
制作側は『ココロコネクト』のアニメオリジナルキャラクターのオーディションと偽り、市来氏を呼び出した。
しかも、監督やスタッフだけでなく、ファミ通のスタッフを「ニセ声優」として動員するほどの徹底ぶり。
これはもう、ドッキリの範疇を完全に超えている。
市来氏は当時、大好きな格闘ゲームの大会への参加を辞退してまで、このオーディションに全てを懸けていた。
もちろん、そんな役が存在しないことなど知る由もない。
彼は真剣に役と向き合い、渾身の演技を披露した。後日「合格」の通知まで受け取っている。
その純粋な情熱が、これから始まる地獄の“ショー”の残酷さを際立たせることになるとは、誰も思っていなかった。
地獄の生放送:3万6千人が目撃した「公開処刑」
全ての悪意が可視化されたのが、2012年6月24日のことだった。
Ustreamで生配信された先行上映会。36,195人の視聴者が見守る中、事件は起きた。
シークレットゲストとして登壇した市来氏の目の前で、まず例のオーディション映像が流される。
そして制作陣から告げられた非情な一言。
「そんな役はありません」
その瞬間、市来氏はその場に崩れ落ちた。
さらに最悪だったのが、その様子を共演者の寺島拓篤氏が大爆笑しながら見ていたことだ。
この映像は生配信で数万人の目に焼き付き、事件の象徴的なシーンとして永遠にネットの海に残ることになった。
もちろん、寺島氏に悪意があったわけではない、と俺は信じたい。
だが、結果としてこの絵面は、視聴者に「いじめの構図」を強烈に印象付けてしまったんだ。
炎上のメカニズム:本当の“発火点”は別の場所にあった
ここからが、この事件の興味深いところだ。
実は、この生放送直後に大炎上したわけではなかった。
真の“発火点”は、約2ヶ月後の8月24日、まったく別の場所で起きた。
アニメ主題歌を担当していたeufoniusの菊地創氏が、Twitterで桃井はるこ氏に対して「しょうもない」と発言し、プチ炎上したのがきっかけだった。
この騒動を扱う2chのスレで、8月27日、ある匿名のユーザー(ID:1UfiAL690、君は歴史を動かした)が「ココロコネクトドッキリ事件」の経緯を箇条書きでまとめたレスを投下。
これが起爆剤となった。
「イジメコネクト」の誕生と拡散
情報は瞬く間に拡散されていく。
2ch(主に嫌儲板)→ まとめサイト → Twitter・ニコニコ動画
この黄金リレーによって、事件はアニメファン以外にも知れ渡った。
この過程で、誰が言ったか「ココロコネクト」と「イジメ」を組み合わせた「イジメコネクト」という、あまりに秀逸なあだ名が誕生し、定着してしまった。
特になんJ(なんでも実況J板)の反応は鋭かった。
「市来くんが可哀想すぎる」「声優は立場が弱いから断れないんだろうな」
彼らの反応は、単なる野次馬的な炎上への加担ではなく、業界のパワハラ構造に対する問題提起という側面を帯びていた。この点は正当に評価されるべきだろう。
関係者たちの“その後”という名の現実
大炎上を受け、関係者はそれぞれの対応を迫られた。
沈黙したプロデューサーと、加害者を庇った被害者
企画の首謀者である山中隆弘プロデューサーは、騒動後、完全に沈黙を貫いた。
公式な謝罪は「スタッフ一同」という曖昧な主語で行われ、最後まで個人としての言葉はなかった。
一方で、被害者である市来氏本人は、9月2日にブログでこう綴っている。
「僕はあれをイジメやパワハラなどとは思っていません」
「寺島君は僕の親友だからこそ、先行上映会やラジオであのような発言をしたのです」
このコメントは、あまりにも痛々しかった。
業界での自分の立場、友人関係、そして作品そのものを守るため、被害者が加害者を擁護するという構図。
このブログこそが、声優という職業の立場の弱さを何よりも雄弁に物語っていたのかもしれない。
業界に刻まれた“傷跡”と、そこから得た“教訓”
この事件は、業界に深い傷跡を残したが、同時に重要な教訓も与えた。
商業的ダメージと作品への影響
当然ながら、商業的なダメージは甚大だった。
BD/DVDの売上は1巻が約2,500枚。続編制作の目安である5,000枚には遠く及ばず、2期の話は立ち消えになった。
作品の出来は素晴らしかっただけに、本当に胸が痛む。
制作陣の愚行によって、傑作になるポテンシャルを秘めた作品が不当な評価を受ける。これほど悲しいことはない。
原作者・庵田定夏氏のあとがきの変化も象徴的だ。
炎上前は「アニメ関係者を含めた全ての皆様に感謝」とあった記述が、炎上後は「出版関係各位に感謝」と、アニメ関係者の名前が綺麗に消えている。これが全てを物語っている。
悪質ドッキリの根絶
だが、ポジティブな変化もあった。
この事件以降、アニメや声優のイベントから、悪質で大掛かりなドッキリ企画は事実上、根絶された。
声優の尊厳を守り、企画内容は事前にしっかり説明する。当たり前のことだが、この当たり前が定着したのは、この事件のおかげだ。
「声優は芸人ではない」という認識が業界に浸透し、パワハラへの感度も格段に上がった。
市来氏の犠牲(と言っては失礼かもしれないが)の上に、今の健全なイベント文化があるのだ。
デマと真実:ネット炎上はいつだって物語を求める
炎上の過程では、多くのデマも拡散された。これもまた、ネット炎上の本質を示す一面だ。
- トチランダム(宣伝企画)はノーギャラ → 嘘。実際は有償。
- 旅費は市来の自腹 → 嘘。実際は支給。
- 市来は新人声優だった → 嘘。当時芸歴9年の中堅。
なぜこうしたデマが広まったのか?
それは、ネットの集合的無意識が「より可哀想な被害者」と「より極悪な加害者」という分かりやすい物語を求めたからだろう。
事実は小説より奇なり、とは言うが、時には事実をよりドラマチックに“改変”してしまうのがネットの功罪でもある。
結論:なぜ俺たちは「ココロコネクト事件」を忘れてはならないのか
「ココロコネクト事件」は、単なる過去のゴシップではない。
これは、クリエイターと演者の歪んだ力関係、テレビ的ノリの安易な持ち込み、そしてネットによる情報拡散の恐ろしさと正義、その全てが詰まった現代の寓話だ。
一つの優れた作品が、制作側の驕りと無配慮によって、永遠に「イジメ」という十字架を背負わされてしまった。
この事実を、俺たちアニメファンは決して忘れてはならない。
この事件を教訓として語り継いでいくこと。それが、不本意な形で傷ついた作品と、勇気を持って声を上げられなかったであろう多くの人々への、せめてもの供養になるのかもしれない。
そして最後にこれだけは言わせてほしい。
『ココロコネクト』、作品自体は本当に面白いんだ。マジで。
- 【最高の主人公】昔のルフィさん、あまりにもカッコ良すぎる!!!!!
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