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【王直】というONE PIECE史に残る「ドクズ」の美学。この男のゲスさに痺れる理由

ワンピース
【王直】というONE PIECE史に残る「ドクズ」の美学。この男のゲスさに痺れる理由

『ONE PIECE』の世界には、星の数ほどの海賊がいる。
ルフィのような夢追い人もいれば、白ひげのような家族を愛する者もいる。

だが、そんなキラキラした海賊像とは真逆。
ただひたすらに己の欲望に忠実で、金と裏切りにまみれた男がいたのを、あなたはご存じだろうか。

その名は、王直。
伝説のロックス海賊団に名を連ねながら、その実態は謎に包まれていた大海賊だ。

今回は、この王直という男にスポットライトを当ててみたい。
なぜなら、彼の存在こそが、『ONE PIECE』という物語の奥深さ、そして人間の業を象徴しているように思えてならないからだ。

伝説の海賊団にいた「異物」

錚々たるメンバーの中での異質さ

まず、王直が所属していたロックス海賊団のメンバーを思い出してみてほしい。
若き日の白ひげ、ビッグ・マム、カイドウ、そして金獅子のシキ……。

後の世で「四皇」や「伝説」と呼ばれることになる、まさに怪物たちの集まりだ。
彼らは良くも悪くも、己の「格」や「誇り」を持っている。

そんな中にあって、王直のプロフィールはどこか異質だ。
異名は「海賊教祖」。ロックス亡き後は海賊島ハチノスを支配し、「提督」を名乗っていたという。

二股に割れた舌、脂肪でたるんだ長い首という、いかにも小物感漂うビジュアル。
ネットの一部では、同じくヌマヌマの実の能力者であるカリブーとの親子関係も噂されている。
カリブーが崇める謎の「神」と、王直の「教祖」という異名。確かにつながりを感じさせるよな。

しかし、彼が本当にヤバいのは、そんな見た目や肩書じゃない。
その本性は、歴史を揺るがしたあの大事件、「ゴッドバレー事件」の裏側に隠されていた。

ゴッドバレー事件、全ての元凶はコイツか?

プンプン匂う「裏切り者」の香り

さて、ここからは少しゲスい話になる。
ゴッドバレー事件の引き金となったのは、ハチノスのマドンナ的存在だったシャクヤクが、天竜人に誘拐されたことだった。

だが、後の描写で驚愕の事実が判明する。
天竜人の一人、フィガーランド・ガーリング聖は、この件を「発注」したと語っているのだ。

「発注」?
つまり、ハチノスの内部に、シャクヤクを売り渡した裏切り者がいた可能性が極めて高いということだ。

そこで、疑惑の目を向けられているのが、我らが王直なのである。
その根拠は、作中で描かれた彼のあまりにも露骨な行動にある。

  • シャクヤク誘拐が発覚した直後、嬉しそうに札束を数えている。
  • 仲間が奪還に燃える中、一人だけ「きな臭ェな…」と狼狽えている。
  • 決戦の地、ゴッドバレーの最前線に、彼の姿はどこにもない。

どうだろうか。
もはや状況証拠としては真っ黒。黒に近い灰色なんてレベルじゃない。
これはもう、犯人だと名乗り出ているようなものじゃないだろうか。

金のために仲間を売る男

もしこの考察が事実なら、王直はとんでもないドクズということになる。
シャクヤクの護衛だった首領・マーロンを不意打ちで殺害し、その上で彼女を天竜人に売り渡した。

ロックス海賊団が誇りや仁義を賭けて戦う裏で、自分だけは金を手にして高みの見物。
なんなら、この戦いでロックスや他の邪魔なメンバーが消えてくれれば儲けもの、くらいに考えていたかもしれない。

事実、ゴッドバレー事件で一番得をしたのは、誰あろう王直だった、という見方もできる。
ロックスは消え、海賊団は壊滅。そのドサクサに紛れて、彼はハチノスの支配者へと成り上がったのだから。

とんでもない野心家であり、究極の俗物。
「海賊」というより、もはや「ハイエナ」と呼ぶ方がしっくりくる。

なぜ俺たちは「ゲスな悪役」に惹かれるのか

「清廉潔白」だけでは物語は面白くない

ここまで聞くと、「ただのクズじゃないか」と思うかもしれない。
だが、俺は声を大にして言いたい。こういうキャラクターがいるからこそ、『ONE PIECE』は面白いのだと。

考えてみてほしい。
誰もがルフィのように純粋で、ゾロのように義理堅かったら、物語に深みは出るだろうか?

王直のような、金と欲望に忠実なキャラクターがいるからこそ、光がより輝く。
彼の存在は、ロックス海賊団が「一枚岩の仲良しグループ」なんかではなく、危険な野心家たちの寄り合い所帯だったという事実を、何よりも雄弁に物語っている。

彼は、覇王でも英雄でもない。
しかし、彼の「金への執着」という、極めて人間的な(そして下劣な)動機が、結果的に世界の歴史を大きく動かしてしまった。

これほど皮肉で、面白い構図はないだろう。
王直は、物語を動かすための「最高の歯車」だったのだ。

見事すぎる「因果応報」の末路

そんな王直の末路もまた、実に彼らしい。
彼は「ロッキーポート事件」にて、黒ひげ海賊団に敗れ、ハチノスの王座から引きずり降ろされる。

そう、黒ひげ。
彼もまた、目的のためなら平気で裏切り、仲間殺しも厭わない男だ。
かつて自分がやったこととそっくりな手口で、全てを奪われる。これ以上ないほどの因果応報だ。

「卑劣な大戦犯として引導を渡される形で因果応報の報いを受けた」
まさにこの言葉がピッタリくる、見事なまでの結末ではないだろうか。

物語から退場するその瞬間まで、王直は「裏切り者の業」を背負い続けた。
ここまで首尾一貫したゲスっぷりを見せられると、もはや清々しさすら覚えてしまう。

まとめ:王直は『ONE PIECE』の闇を照らす光だ

王直は、決して読者から愛されるキャラクターではないだろう。
むしろ、多くの読者から「クズ」「卑劣」と罵られる存在かもしれない。

だが、彼の存在なくして、ゴッドバレー事件の全貌は語れない。
彼のゲスな欲望がなければ、ロジャーとガープが手を組むという奇跡も、ロックス海賊団の崩壊もなかったかもしれないのだ。

華やかな表舞台に立つ英雄たちの物語の裏側には、いつだって王直のような男たちの暗躍がある。
彼は『ONE PIECE』という壮大な物語の「闇」を象徴する存在であり、同時に、その闇があるからこそ光が際立つことを教えてくれる、重要なキャラクターなのだ。

今後の回想シーンで、彼のさらなるクズっぷりが描かれる日が待ち遠しい。
尾田先生には、ぜひとも最高の笑顔で札束を数える王直の姿を描いてもらいたいもんだ。

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