
なぜ俺たちは我妻善逸の『汚い高音』に心を掴まれたのか?――ヘタレの皮を被った『覚醒ヒーロー』
鬼滅の刃
『鬼滅の刃』という巨大なコンテンツの中で、一際異彩を放つ男がいる。
その名は、我妻善逸。
金色の髪、泣き叫び、鼻水を垂らし、女の子を見れば結婚を迫る。
初登場時、多くの読者が「なんだコイツは…」と眉をひそめたはずだ。俺もそうだった。
だが、物語が進むにつれて、気づけば俺たちは彼の動向から目が離せなくなっていた。
ついには第2回人気投票で主人公・竈門炭治郎を抑えて1位に輝くという、とんでもない下剋上を成し遂げる。
なぜ、あれほどうるさくて情けない男が、日本中の心を鷲掴みにしたのか。
今回は、我妻善逸というキャラクターの魅力の本質を、少し深く掘り下げてみたいと思う。
ギャップ萌えの究極形態――「眠りの剣士」という発明
善逸の魅力を語る上で、避けては通れないのがその極端な二面性だ。
普段の彼は、もはや清々しいほどの「ヘタレ」である。
「俺はな もの凄く弱いんだぜ 舐めるなよ」
鬼殺隊士にあるまじきこのセリフ。常人ならざる人格者である炭治郎ですら、思わず般若のような形相になってしまうほどの奇行の数々。
任務のたびに死を確信し、民間人の子供に「俺を守ってくれ」と泣きつく始末。
この徹底した「ダメさ」の描写は、もはや様式美の域に達している。
だが、彼が極限の恐怖で意識を失った時、物語の空気は一変する。
眠りに落ちた善逸は、臆病というリミッターが外れた「本来の剣士」の姿を現すのだ。
――雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃。
静寂の中、瞬く間に鬼の頸を両断するその一閃は、まさに雷光そのもの。
アニメでこのシーンが描かれた時の衝撃は、今でも忘れられない。
普段の情けなさが壮大な「前フリ」として機能し、覚醒した時のカタルシスを何倍にも増幅させる。
これは単なる二重人格ではない。臆病風に吹かれて強張っていた身体が、無意識下でようやく十全に機能するようになっただけ。
つまり、あの電光石火の剣士こそが、我妻善逸の本当の姿なのだ。
「やる時はやる男」という言葉があるが、善逸はその究極形態と言えるだろう。
この鮮やかすぎるギャップこそ、我々が善逸という沼に足を踏み入れる最初のきっかけだったに違いない。
共感の嵐を呼ぶ「究極の自己肯定感の低さ」
しかし、善逸の魅力は単なるギャップ萌えだけでは説明がつかない。
彼のキャラクターの核を成すのは、痛々しいまでの「自己肯定感の低さ」だ。
「俺は 俺が一番自分のこと好きじゃない ちゃんとやらなきゃっていつも思うのに 怯えるし 逃げるし 泣きますし」
この独白は、善逸の苦悩を象徴している。
彼は、自分が臆病で、逃げ腰で、どうしようもない人間だと誰よりも理解している。
その根源には、親を知らずに育ったという彼の出自がある。
自分が誰かにとって「要らない人間」だったという認識が、彼の心の奥深くに暗い影を落としているのだ。
この感覚、多かれ少なかれ、あなたにも身に覚えがないだろうか。
自分はダメな人間だ、もっとちゃんとしなければ。そう思いながらも、変われない自分に嫌気がさす。
炭治郎のような太陽の如き善良さや、伊之助のような天真爛漫な強さを持つ主人公たちとは対照的に、善逸は俺たちと同じ地平にいる。
コンプレックスを抱え、理想と現実のギャップに苦しみ、それでも「変わりたい」ともがき続けている。
この痛々しいほどの人間臭さこそが、読者の共感を呼び、彼を単なるギャグキャラクターから「応援したい存在」へと昇華させた最大の要因ではないだろうか。
完璧なヒーローよりも、欠点だらけの人間が必死に立ち向かう姿に、俺たちは心を動かされるのだ。
ヘタレの仮面に隠された「優しさ」と揺るがぬ「信念」
そして、善逸を語る上で絶対に見過ごしてはならないのが、その臆病さの奥に秘められた本質的な「優しさ」だ。
その真価が最も発揮されたのが、那田蜘蛛山での一幕だろう。
炭治郎が鬼(禰豆子)を連れていると知りながら、猪突猛進する伊之助の前に立ちはだかるシーン。
普段、自分の命が何よりも惜しいと泣き喚く男が、ボロボロに殴られながらも、炭治郎の大切なものを守り抜いた。
「俺が……直接炭治郎に話を聞く だからお前は………引っ込んでろ!!」
彼は、炭治郎から聞こえる「泣きたくなるような優しい音」を信じたのだ。
並外れた聴覚を持つ善逸は、人の嘘や本質を聞き分けることができる。
だが、彼はその能力を疑心暗鬼に使うのではなく、「自分の信じたい人を信じる」ために使う。
これは、臆病さとは対極にある、一種の「強さ」と言えるだろう。
そして、彼の行動原理の根幹をなす、あの有名なセリフ。
「禰豆子ちゃんは俺が守る」
これは単なる女好きの戯言ではない。彼が己の恐怖を乗り越え、剣を振るう理由そのもの。
この一途な想いが、彼のヘタレな言動の数々に、一本の揺るぎない芯を通しているのだ。
ネットを揺るがした「汚い高音」と「人気投票1位」の真相
さて、ここからは少しメタな話をしよう。
善逸の爆発的な人気は、アニメ化、特に声優・下野紘さんの熱演なしには語れない。
彼のオーディションが、通称「汚い高音選手権」だったという逸話はあまりにも有名だ。
あの鼓膜を劈くような絶叫と、情けない嗚咽は、善逸というキャラクターに命を吹き込み、その魅力を120%引き出した。
原作の面白さに加え、声と動きがついたことで、善逸のギャップはよりダイナミックに、彼の苦悩はより切実に我々に伝わったのだ。
そして、ネットミームとの親和性の高さも見逃せない。
「我妻ジェノザウラー善逸」なる謎のミームが爆誕したり、『約束のネバーランド』の人気投票にランクインしたりと、彼の存在は作品の垣根を越えて愛されるコンテンツとなった。
こうした現象が積み重なり、彼はついに公式人気投票で1位の座に上り詰める。
これは、我妻善逸が単なる作中の一キャラクターではなく、ファンと共に成長し、ファンに育てられた稀有な存在であることの証明だろう。
最後に
我妻善逸は、決して完璧なヒーローではない。
臆病で、女好きで、いつも泣いている。
だが、誰よりも自分の弱さを知っていて、それでも大切なもののために立ち上がろうともがいている。
その姿は、不完全な俺たち自身を映す鏡のようだ。
だからこそ、彼が恐怖の果てに放つ一閃は、我々の胸を強く打ち、彼の汚い高音は、我々の心を揺さぶってやまないのだ。
彼は「愛すべき馬鹿」であり、同時に、弱さを抱える全ての人々にとっての希望の光なのかもしれない。
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