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【鬼滅の刃】最強の男・悲鳴嶼行冥はなぜ「かませ犬」にならなかったのか?

鬼滅の刃
【鬼滅の刃】最強の男・悲鳴嶼行冥はなぜ「かませ犬」にならなかったのか?

初見で「あ、この人たぶん強キャラに見せかけたかませ犬だな」って思った人、正直に手を挙げてください。

そう、鬼殺隊最強と謳われる岩柱・悲鳴嶼行冥のことです。

2メートルを超える巨漢、盲目、特殊すぎる武器、そしてやたらと涙もろい。

少年漫画における「強敵のインフレについていけず、主人公たちの成長の糧となる先輩キャラ」のフラグを、これでもかと満載した男。

しかし、ご存知の通り、彼はその全ての予想を裏切りました。

物語の最初から最後まで、文字通り「鬼殺隊最強」として君臨し続けたのです。

今回は、この悲鳴嶼行冥という男が、なぜ数々のかませ犬フラグをへし折り、最強であり続けられたのか、その魅力の核心に迫ってみたいと思います。

「最強」の説得力を支える、圧倒的な原体験

彼の強さを語る上で、まず触れないといけないのは、その異常なまでのフィジカルです。

しかし、ただデカくて力が強いだけなら、それこそ「やられ役」のテンプレで終わってしまいます。

悲鳴嶼の強さが本物だと読者に知らしめたのは、鬼殺隊に入る前の、あの壮絶な過去エピソードでしょう。

呼吸も日輪刀もなしに鬼を「殴り殺した」男

まだ全集中の呼吸も知らない、ただの盲目の青年だった彼が、寺の子供たちを守るために何をしたか。

素手で、夜明けまで鬼を殴り続けた。

…いや、パワーワードが過ぎますよね。鬼は日光か日輪刀でしか滅せない、というのがこの世界の絶対的なルール。

それを彼は、ただひたすらに物理的な暴力で拘束し続け、太陽の光で焼き殺すという荒業で成し遂げたのです。

アニメではその描写がさらにエグくなっていて、鬼の両腕を腕力だけで引きちぎっていました。

もはや「天与の才」としか言いようがない。

この原体験こそが、彼の「最強」という称号に、何よりも重い説得力を与えているのです。

盲目だからこそ完成した、異次元の戦闘スタイル

彼の武器は、棘付き鉄球と手斧を鎖で繋いだ、もはや日輪刀の概念を破壊するような代物。

この鎖を振り回す金属音をアクティブソナーのように使い、周囲の空間を立体的に把握する。

盲目というハンデを、むしろ独自の戦闘術を編み出すためのアドバンテージに変えてしまっているわけです。

「盲目キャラは強い」というのはお約束ですが、悲鳴嶼の場合、その強さの理由付けが非常にロジカルで、読者を唸らせます。

パワーだけでなく、卓越した技術と戦術眼を兼ね備えているからこそ、彼は最強なのです。

涙の裏に隠された「慈悲」と「不信」という名の鎧

悲鳴嶼行冥というキャラクターの深みは、その強さだけではありません。

常に涙を流し「南無阿弥陀仏」と唱える彼の内面は、壮絶な過去によって形作られています。

一見するとただの慈悲深い人物に見えますが、その心は複雑な二面性を抱えています。

「子供は残酷だ」―悲劇が生んだ人間不信

彼の過去は、救いようのない悲劇の連続でした。

自分が育てていた孤児の一人(後の獪岳)に裏切られ、鬼を寺に招き入れられる。

必死に守ろうとするも、他の子供たちは彼を信じずに逃げ出し、殺されてしまう。

唯一守り切った少女・沙代には、恐怖で錯乱していたとはいえ「あの人は化け物。みんな殺した」と証言され、殺人犯として投獄される。

善意がことごとく裏目に出る地獄のような経験。

これが、彼の心に「子供」という存在への根深い不信感を植え付けました。

柱合会議で炭治郎に放った「鬼に取り憑かれているのだ 早く殺して解き放ってあげよう」という言葉。

これは一見、無慈悲で独善的に聞こえますが、彼の過去を知ると意味合いが変わってきます。

「己の欲のために鬼と手を組む子供」という、彼が最も忌み嫌う存在に炭治郎が重なって見えた。

だからこそ、彼なりの「慈悲」として、これ以上罪を重ねる前に終わらせてやろうとしたわけです。

彼の厳しさは、深い悲しみから生まれた自己防衛の鎧だったのかもしれません。

それでも失われなかった、本質的な優しさ

しかし、そんな壮絶な過去を経験してもなお、彼の根底にある優しさは消えませんでした。

鬼喰いという禁忌に手を染めた不死川玄弥を、規約上の「継子」にはできないとしながらも、事実上の弟子として受け入れ、面倒を見る。

かつて鬼に襲われた胡蝶姉妹を救い、鬼殺隊への道を拓いてやる。

そして、猫好きという公式設定。甘露寺蜜璃と猫談義で盛り上がる姿を想像すると、そのギャップにやられますよね。

彼が流す涙は、決して弱さの象徴ではありません。

他者の痛みや喜びを、誰よりも敏感に感じ取ってしまう、あまりにも優しい心の現れなのです。

最強の男にまつわる、ちょっとゲスい裏話

さて、ここからは少し下世話な話になりますが、彼の人気について触れておきましょう。

今でこそ絶大な人気を誇る悲鳴嶼さんですが、連載初期はかなり不遇でした。

「炭治郎が斬った岩」以下の男

記念すべき第1回キャラクター人気投票の結果。彼の順位はなんと62位。得票数はわずか3票。

ちなみに、炭治郎が修行で斬ったあのデカい岩は51位(7票)でした。

…そう、岩より人気がなかったのです。

これには担当声優の杉田智和氏もかなりショックを受けたらしく、ラジオなどでネタにしています。

しかし、物語が進み、彼の過去や人柄、そして圧倒的な強さが描かれるにつれて評価は急上昇。

第2回人気投票では843票を獲得し22位にまで躍り出ました。

これは、見た目や第一印象ではなく、中身で読者の心を掴んだ、彼の魅力の何よりの証明と言えるでしょう。

『銀魂』のゴリラが送り込んだスパイ?

もう一つ有名なのが、『銀魂』の作者・空知英秋先生との奇妙な縁。

劇場版『無限列車編』の大ヒットに際し、空知先生が描き下ろしたイラストにこんなコメントがありました。

「(鬼滅のヒットは)うちの柱にこっちのスパイを送り込ませてたのが功を奏したんだと思います」

この「スパイ」というのが、声優が同じ杉田智和氏である悲鳴嶼行冥を指しているのは、もはや言うまでもありません。

ネットでは「そのうちワニ先生に食われるぞゴリラ」とお約束のツッコミが飛び交いました。

作品の垣根を越えて愛される(?)のも、彼が持つキャラクターパワーのなせる業ですね。

まとめ:強さとは、悲しみを乗り越えた先にあるもの

悲鳴嶼行冥は、少年漫画の「かませ犬」という宿命を、その圧倒的な実力と、何より深い人間性で覆した、極めて稀有なキャラクターです。

彼の強さは、恵まれた肉体だけではありません。

裏切られ、誤解され、それでもなお人を信じようとする心の強さ。

仲間たちの信頼を一身に背負う覚悟。

そして、どんな悲劇に見舞われようとも、その奥底で輝きを失わなかった慈悲の心。

それら全てが合わさって、「鬼殺隊最強」という存在を形作っているのです。

彼の生き様は、本当の強さとは何かを、私たちに教えてくれる気がします。

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